平先生の文章はどれも、しんどい時に沁みわたるあたたかいことばであふれていた。
この本のおかげで「病院行こう」と気軽に考えられたし、休んで身体を回復する時間を持つことができた。
抑うつ状態の時に脳内で起こっていること(脳内ホルモンの働き)が分かりやすく、
「今の自分は、脳内ホルモンがうまく働かず、頭が正常に機能しなくなっているのか。だから色々と調子がおかしくなっていたのか。」と客観的に捉えることができ、安心感を覚えた。
セロトニン(心のブレーキ)
心の安全装置のような存在。低下すると憂鬱、不安、焦燥感が強まります。
ノルアドレナリン(心のアクセル)
心にやる気を灯す存在。低下すると意欲や興味関心が減退します。
ドーパミン(心のエンジン)
心にワクワクを抱かせてくれる存在。低下すると楽しくなくなります。
(p.031より引用)
この3つが重要な役割を持つ神経伝達物質であり、この順番で回復していくのだ、ということが平易に書かれていた。
休職初期、とにかく自分がこの先どうなっていくか不安で仕方なかった。そんな時に、この文章に出会って、大まかにでも回復のプロセスが見えてきたことは、自分にとって大きな力になった。
「本当に強い人とは… 自分の限界を素直に認められる人(p.076)」この言葉を胸に、これからの人生を歩んでいきたい。
40歳の節目、仕事面・私生活での大きな変化が重なり、心身に不調をきたしたことがきっかけで興味を持った1冊。
著者の東畑さんと4名の方々との対談を通して、自分自身の状況を複数の視点で客観視することができた。
ミドル・エイジとは「新しいことを始める物語ではなく、古いことを続けていく物語。」「成長の物語ではなく、停滞の物語。」であり、それは「物語になりにくい物語たち」である。自分自身を振り返ると、不調のトリガーこそ直近の予期せぬ転職(と転職先でアサインされた業務の不適合)であったが、その裏には、ここ数年抱えていた「歳を重ねてなお今の働き方を続けていくことは難しいよな。働き方をシフトしていかなければ。」という漠然とした不安・危機感があったと振り返る。
半ば何かに追い立てられるように、新しい知識を取り込み技術力を高めることに必死だった20代、30代。
それで乗り越えられた課題はたくさんあったし、自分の仕事の幅を広げてくれたことは確かだった。
しかし、そのやり方がずっと通用するわけではない。この先無限に成長していくことはなく、どこかで頭打ちになる。
「カードは出揃っている。そのカードで続けていく。」という尾崎世界観さんの「停滞の物語」。
「自分が思い描く直線的な物語にこだわらずに、外からやってくる物語に揺さぶられることで、その都度折れ線を描いていけばいいじゃないか」という鷲田清一さんの「処方箋」。
自分のこれからの歩み方を見つめ直すヒントが得られたと思う。
長田弘さんの作品との出会いは、書店でタイトルに惹かれて手に取った「人はかつて樹だった」という1冊の詩集だった。
日々忙しく働き心のゆとりが無くなっていた時期。手に取ったその一冊は、帯にある通り「大切なことだけが書かれている詩集」。
そこから、長田さんの詩集やエッセイ集を買い集めるようになった中で出会ったのが、この一冊。長田さんが、海外の詩人・作家たちのゆかりの地を訪ねた旅の紀行集。
「読み終えて終わるのではなく、読み終えたところからはじまる、もう一つの読書がある。そのようなもう一つの読書が、私には旅だった。」
長田さんの文章を通して、「風景の中に遺されている無数の言葉」に耳を澄ませたいと思いな。